幾山河隔てて我と初富士と
竹林の竹が粉を吹く淑気かな
冬枯れて気骨残れる大欅
光陰が貌を縁取る初鏡
女たちの子守歌 みなみ恋し ふるさと
幾山河隔てて我と初富士と
竹林の竹が粉を吹く淑気かな
冬枯れて気骨残れる大欅
光陰が貌を縁取る初鏡
大腿部骨折の時に取り付けし金具がごろんと遺骨に混じる
花々に埋もれて眠る母の棺に声をかけたり「帽子似合うよ」と
讃美歌の曲が流れて久々に礼拝堂に入りたり我は
母逝きてまだ三日もう三日なり一番電車の遠のく音する
ある時は「帰らないで」と涙する母をいさめて芝居見てをり
妹は母との約束果たさむとまだ温き亡母(はは)のほほ皺伸ばす
表情の出てきたといふ母なれど泣くことなりき頭なでつつ
病室の母に会うため通ひしが「ただいま」と言へりいつよりか吾の