寝たきりの老母なれば心にて祈るが如く話かけたり
短歌研究5月号 馬場あき子選 mohyo
曇天の昼をメジロのこゑやみて多くは留守の町内しづまりぬ
短歌研究3月号 永田和宏選
そちこちのふとん叩く音しづもりて研ぎ澄まし読む昭和史の闇
戦争で儲けし人ら闇にをり例へば満州立国のころ
若き腕の 松岡尚子
介護職に就きて働く青年の俳優への道険しくもあらん
若き腕の力強しと誉むるわれにしらたまの歯を見せて笑みたり
寂聴氏のことを語りて若やぎし熊井頼子氏逝き給ひたり
書けずをるなり 松岡尚子
記録簿に『帰宅願望あり』と書くグループホームに過ごすその人
時折にふいに泣く人記録簿に『感情失禁』とは書けずをるなり
トマト入りのオムレツ作る入居者の真剣な目つき主婦に戻りぬ