2008年04月12日
美男とぞ仰ぐ大仏夏木立
この特別作品では、JUNさん鎌倉吟行における一連の写生句を発表されてい
ます。そこで掲句、言うまでもなく与謝野晶子の歌を踏まえた確信犯の夏木立で
すが、類想のそしりなど意にも介さない痛快さで鎌倉の夏の空気を活写しておら
れます。氏のこういった大胆な冒険心、遊び心は他の作品中にも随所に認められ
私も大いに参考とさせていただくところです。それではダンディーなロマン派JUN
さんの俳句を拝見してまいりましょう。まずはその写生句から。
竹の秋古き暖簾のすきうどん
天が下襁褓(むつき)干されし小春かな
白百合や危ふきまでに茎傾げ
裏窓に小さくのぞく山の秋
JUNさんの写生句は実景から得た詩因を心の内にしばし遊ばせ詩情を膨らま
せたうえで詠み出されているようです。そのため詠まれた「物」が秘めた想いを語
りだすように繊細な情趣を醸し出します。
嫁ぐ子と落葉の道を歩みけり
高枝の赤きを妻へさくらんぼ
こうしたご家族への想いのこもる句もJUN調です。例えば二句目、このさくらん
ぼに託す奥様への愛はルビーの赤に勝ります。
秋の陽が紅茶をくぐる出会ひかな
別離今溢るるばかり雪柳
酔ふてゐし再会の夜の朧月
春惜しむニコライ堂の袂(たもと)より
人のため祈ることあり遠花火
そして最もJUNさんらしい句といえばやはりここに挙げた作品群でしょう。景も
光も鮮やかに、小説か映画の一場面を切り取ったような情感あふれるJUN俳句
です。
以上JUNさんならではの味わいを見てきましたが、氏の俳句の真髄はさらに
もっと深いところにありそうです。前述の写生句にも通じますが、ドラマ性を抑制
して深い心象に至る句。これらの句こそJUN調の極みと言えるのではないでしょ
うか。
榧(かや)の葉を伝ひ落つ雨素逝(そせい)の忌
遠退のきし日の美しき日記果つ
春の雪ふはりと失せしものひとつ
秋思ふと睫毛に遊ぶ日の光
投稿者: mohyo 日時: 2008年04月12日 23:57 | パーマリンク | コメント (0) | トラックバック (0)