なほ覚めずあれ    松岡尚子

・ 山上の風の如くに過ぎし人安立スハルの歌集読み終ふ

・ 詩が書けぬほどに弱るな詩が書けぬほどに弾むな言葉のつよし

・ 生きの身の生くる暮しのながき夢なほ覚めずあれとスハルの言葉

・ 火の玉を胸の奥処に持つがよしと歌人としての姿勢示しぬ

・ 何物も持たずすべてを持つ境地願ふと詠みし安立スハル

・ まだ知らぬ自分に会へる生くべしと安立スハルの言葉を信ず 

家族の歌会   数年前のものです。       mohyo

捨てようと整理していたものの中からでてきた。

ふーしゃん

・ 満開のしだれ桜の紅の花右まわりに観左まわりに観る

・ ゴッホ描けり青の大空黄の畑不安ただよふ曲線の教会

松岡尚子

・ 予想もせぬ展開見する人生の不可解故に養ふるこころ

・ 曇日の潮来のあやめ花びらの白きを眺め紫を眺む

佐野豊子

・ 山いちめん芝桜咲くひつじ山日のくれどきに羊鳴くなり

・ 春星は密やかに落ちて花になる秩父連山ついに暮れたり

JUN

・ 人も街も置き去りにして万緑の山懐へ歩み入りにき

・ 春雷や微かに起きし旅心

・ 桃の花吾を窺ふ童子あり

・ 裏庭に父の影なし柿若葉

mohyo

・ バロックのオルガン響く虫たちの羽音のような草匂うよな

・ 水道水なれどこの朝春めきて耳の裏まで水洗いせん