・ 夏空に蝉の声消ゆヒロシマは八月六日八時十五分
ほたるぶくろの面持ち 松岡尚子
・ とらへ得ぬほたるぶくろの面持ちをよしと思ひて夏の野を行く
・ 防空頭巾持ちて歌会に行きしこと詠ひてあれば心緊まり来
・ 弓道の人を思ひぬ弓を引き的を狙ひて他を見るなし
・ 目の覚めて身体も徐徐に覚めゆくにみんみん蝉鳴く生の限りを
・ 走り来て歯科はあそこと再びを教へくれたりワンピースの人
入道雲 mohyo
・ 入道雲たまゆら黒きにたぢろぎぬ地震ニュースの流るる午後を
「白の時代」 空っ風
・ ユトリロの「白の時代」に迷ひ込み舘出づれば夏の陽まぶし
コスモス JUN
・ コスモスの揺るるためにぞ咲きにける
第21回全国短歌大会 in 塩尻 空っ風
・ 還暦の教え子と来し富士登山八合目小屋に日の出を迎ふ
NHK別府短歌大会 空っ風
・ ヴェルレーヌ詠ひし巷の雨上がり心に降る雨乾かしてをり
NHK郡上市古今伝授の里短歌大会 空っ風
・ 風ひかる「江戸川ウォーク」の先頭は人影小さく市川橋(はし)渡りゆく
NHK熊野路田辺短歌大会入選 空っ風
・ 反戦デー、フォークの集ひ遥かなりあの日の君も古希となりしか
みなとみらい文芸祭佳作 空っ風
・ 麦秋の京の町家は時間(とき)止まり土瓶の湯気に人影ゆれり