幼き日見慣れし赤城山なつかしく父母の遺せし廃屋(いえ)の草引く
膝小僧ならぶ mohyo
それぞれに背負ふものあり玄関に家族見送る笑顔で元気に
子の心吾(あ)をなぐさめぬわがうたの歌評伸びやかちゃぶ台の上(へ)に
黒スーツ黒ヒール履くOLの膝小僧並ぶ春 もう春なんだ
われよりも老ひたる人と二人にてもったいないねと無料バス待つ
短歌研究8月号 高野公彦選歌 mohyo
「大丈夫元気なのね」と妹の声するケイタイをにぎりしめ行く
さりげなく過ぐ 松岡尚子
ゆったりと硝子の向かうを行き来して虎は去りゆく役者の様に
みづうみのやうな眼をして首長し二頭の麒麟がさりげなく過ぐ
群がりてざわざわとする人間を腰を降ろして眺むるゴリラ