合同歌集「清瀬短歌サークル」

「はじめに」のことばに印象に残る言葉があった。
「先人の秀歌を朗読することも若さをたもつ近道と考えます。
短歌はひとりひそかにかきとめるのもいいですが、他の人に
読んでもらい歌の心が読者に届いた時にいっそう輝きをはなつ
詩形でもあります。」

・もうれつな暑さの朝の道路わきみみずはすでにシミと なりおり

・満員の電車の中に立ち寝する特技も近く終はらむとす も

・かぎ穴の向こうにニャオと声のする帰宅待つリリー今 あけるから

・着替えする吾を網戸の蝉覗く人影のない五階の小部屋

・いつからか夫婦で交わす「ありがとう」労わり生きる 七十路われら

・空高く風とひとつに舞うトンビ悩みの小さくなるまで 眺む

・片目にも視力あるうち読みおかむ満州移民の「信濃昭 和史」

・置き去りにされし男の子の泣く中を聞こえぬふりに逃 避行する

・少年は日本人みてさくらさくらベルギーの街にアコー デオン弾く

・若竹の天空に舞いさわさわとしなう強さを 吾も持ち たし

・十字架が紅茶いろして暮れゆけば祈る人びとなごみゆ きけり

・つね通う八百屋の屋根にふれそふな柿の木芽吹く黒穀 残し

読後感がさわやかで老人カが伺われる。老人が作る短歌の姿勢が示されている。

綾子

滅びゆく  JUN

滅びゆく光のなかを秋の川
秋の日や空に柳葉魚の簾干し
紅葉して降る雨明し倉戸山
秋澄みて若き心地の歩を早む