能舞台  佐野豊子 

竹群をさやさや風の音たてて鼓、笛方舞台にいでくる能楽のいっかんの笛ぴゆーと鳴りからだ貫き亡霊をよぶ

くちどめに殺された漁師の亡霊は頬のこけた痩せ面つけおり

能役者はたしかに大変目の穴からのぞくこの世の柱にぶつかる

豊子