短歌と感情 宮 柊二先生 (5)

短歌と感情(昭和四十三年五月十八日)  −長狭高校講演速記録より抜粋

なんとなく母に退学するといいて おさまらぬ胸をおちつかせてみる

「おさまらぬ胸」というような気持ちは私にも分かるような気がする。理屈では彼も「おさまらぬ胸」がどういうことか言えない。
喜びもありましょうが青春の不満もある。それは説明できないもの何かモヤモヤした不満がある。


かもモヤモヤして怒りっぽくなる気持ちは一番近いものにぶつかっていくものである。だからこの歌でも、俺は退学するよなんて言って、お母さんを一種の甘え
ですが脅かすんですね。お母さんを脅かすなんて悪い生徒だと思うんですがそう言ってみたい作者の気持はきっとあるのだ。胸の中にそして言った。

更にこういう歌をうたっておけば私くらいの歳になった時に、そうだったのか。あのときの自分の気持ちはそうだったのかときっとわかる。そして、若い、この歌の年頃の少年のその胸中がわかってやれる。それが歌のいい所である。

その歌っている時の正直な気持ちを残していく。お母さんを脅かすことによって、気持ちを落ち着けていて良くないと思うけれども、この作者の気分、私にも覚えがある。

綾子

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