猫とふたり

客ぶとん仕舞いて猫にかたりかく
「お盆がすぎてまた君と二人」
(オリーブ)

原作
人に言うごとくに猫と語り合う「お盆が過ぎてまた君と二人」

(アドバイス)
人に言うごとくに はいらないのでは。下句で猫に語りかけていますから。

作者
猫に語りかけている自分に可笑しくなりました。

作者
息子夫婦が上京してにぎやかでしたが、帰ってしまいました。その時のうたです。

ひゃら
ほっとした気持ちと淋しさが入り混じった歌でしょうか。

作者
客布団を仕舞ったり用事は、ありますね。

ひゃら
客ぶとん仕舞いて猫にかたりかく「お盆がすぎてまた君と二人」

作者
それで良いと思います。

 

窓辺の物芽  JUN

如月の泥を付けたる葱を買ふ

春めくや時過ぎ行きて子は母に

ひとりぼつち二月の風が雲を追ふ

川の字に布団干されし寒の明け

窓掃除終へし窓辺の物芽かな

三十歳(みそとせ)を通ひし小道日脚伸ぶ

風花が「三億円の道」に舞ふ

み空晴れ山茱萸の黄濃くしたり

福寿草  ふーしゃん

96年の作品

内暗く老樹の立つを境界に外人墓地をUターンせり

楽(がく)にのり世界各地の人形がわが前を通る平和なるかな

国分寺よりタクシーに乗りナイターを知らざる若き運転手に会う
忠実に今年も咲ける福寿草花数殖えていきいきとせり

自転車  松岡尚子

施設より借りし自転車前かがみの若向きの故われには合わず

おのが身の一部とはなる自転車を自分の金で買わんと決めぬ

朝より夕刻までを待ちくれし駅の自転車にごめんねと言ふ

夜を継ぎて粉雪降るに自転車はこほれる如く我を待つなり

寒ければ自転車止めて自販機の缶珈琲で手を温むる

牛乳瓶の感触   佐野豊子

飲み終わりし牛乳壜の感触をくちびるにあてふわーんとあくびす

石の上のトカゲのような緊張感とけずとけない母看取る日々

桃咲けど根雪のさむさ温かさ疲れはかすか人遠ざける

日だまりはポンカンポポン布団ほすヘルパーさんの声こだまして

遭難者ヘリにて運ぶ雪山の映像見つつふと涙でる

姑(はは)  Mohyo

畑する姑の希(ねがひ)わが夫わが子に会ふ日かぞへゐましき

姑(はは)の歌書き写しつつ蕎麦を打つ姿目に起つわれら従へ

姑のやさしき思ひ今ならば許せるものを吾子遠ざけし日よ