2002年8月
『梅雨空』 投稿者:オードリー・テル 2002/08/27
頭を押せば「ニィアーン」と鳴くぬいぐるみ地下売店にしばし遊べる
仇討ちをするかの如く部屋ぬちの蝿おひかける外は梅雨空
<奥村晃作>
「しばし遊べる」は「 遊びつつ待つ」とした方が歌としてしまる。
2首ともに、思いがけない展開が、イメージを広げている。
1首目「 ぬいぐるみ」のあと 「 地下売店に」と予想できない言葉を持って来ての飛躍。 2首目は 4句切れにして、結句「外は梅雨空」と飛躍表現を行い、イメージを豊かにしている。
『脚の違和感』 投稿者:夏川 2002/08/27
吾が歩み止めることなく信号が青になりたり今日もうまく行く
このままの生活(くらし)つづくとは限らない起きぬけに会う脚の違和感
<奥村晃作>
一首目 信号が → 信号は の方が良い。小さな気づきの感動をしっかり受け止めて歌い、言葉にリアリティがある。 五七調の音楽性(初二句5・7、続いて三・四句5・7のリフレイン)も優れたレトリック。
二首目 老いとか衰えは誰もが感じる経験である。脚の違和感という身体からの信号 を受け止めての感懐を歌い上げた。
二首共に現代的な、個性的な歌である。
< 夏川 >
生活(くらし)とルビを打ったが暮らしという字を使いたくなかった。
あまりルビを振らない方が良いのなら「くらし続くとは」にしたい。
『梅雨空』 投稿者:オードリー・テル 2002/08/27
頭を押せば「ニィアーン」と鳴くぬいぐるみ地下売店にしばし遊べる
仇討ちをするかの如く部屋ぬちの蝿おひかける外は梅雨空
<奥村晃作>
「しばし遊べる」は「 遊びつつ待つ」とした方が歌としてしまる。
2首ともに、思いがけない展開が、イメージを広げている。
1首目「 ぬいぐるみ」のあと 「 地下売店に」と予想できない言葉を持って来ての飛躍。 2首目は 4句切れにして、結句「外は梅雨空」と飛躍表現を行い、イメージを豊かにしている。
『痩せ薬』 投稿者:博夫 2002/08/26
「御芝堂減肥膠嚢(おんしだうげんぴかうなう)」毒ぐすりいや痩せぐすり「減」の字がある
毒ぐすりなれど「欲しい」と叫びさう「魅力女人純天然減肥膠嚢」
<奥村晃作>
1首目 「御芝堂 減肥膠嚢(おんしだう げんぴかうなう)」と長い薬の名前を初2句に据え、初句5音、2句7音とぴたりと収めている。一首は定型作品である。
2首目 「魅力女人純天然」が第4句。5句が「減肥膠嚢」で7音ピタリ。
第4句は大変な字余りであるが、あまり気にならない。第4句は キャパシティが大きく、12音でも飲み込んで収めてしまい、破調とはならない。1首 2首ともに難しい名前を短歌形式に上手く収めて作品にしている。
くすりの名前に触発されての作品。 中国から輸入されたものでもあるところから時事詠ともいえる。
『親族愛』 投稿者:mohyo 2002/08/25
中国の女性教師の説明はもの言ひやはくはみださぬ構え
戦ひの無惨を告げる起結なり親族愛が民族愛になりて
<奥村晃作>
はみださぬ構え → 的確な表現か疑問である。
2首目 はりきりすぎて歌が概念的になっている。イメージがない言葉、感覚性がない言葉を連ねたら失敗する。触発されたものを具体的に挙げると良い。女性教師はイメージしやすい言葉である。
リアリティのない言葉を並べても歌としての力がない。
<mohyo>
親 兄弟姉妹を愛することは美しい。しかしそういった親族愛が往々にして戦争の起点になっていることに気がついたので歌にしたかったが討死にした。
その昔 投稿者:秀子 投稿日:2002/08/03(Sat) 15:58 No.1007
その昔生まれ来し娘に吾が母の名前を欲しいと言いしひとあり
ツヤ子とふ吾が母の名を付けられし彼の女は今如何におわすや
水打ちし北向きの玄関静もれり今日から葉月まだ暑き夕
公園の木陰にゴルフする老いと少年の声空に響けり
ホウセンカ 投稿者:秀子 投稿日:2002/08/02(Fri) 05:09 No.1006
空き家らし荒れ庭に咲くホウセンカ背戸吹く風に種はじけ飛ぶ
眠られぬ真夜部屋の片隅にパソコン立ち上げ受信欄見る
金魚百匹 投稿者:ひゃら 投稿日:2002/08/02(Fri) 00:25 No.1003
たけのこは青竹となり手におえず雀の宿に一夏貸しおく
紫陽花のピンクの花に触れてゆく雨曇る日の踏切りを越え
骨折をまぬがれ母が退院す泣くまでいじめる看護婦さんおり
手拭いに赤い金魚の百匹が泳いでおりぬ粗品を解けば
Re: 金魚百匹 秀子 – 2002/08/02(Fri) 05:02 No.1005
若い看護婦さんもいずれ行く道なのに、それに気づかないのでしょうか、どの世界にも心無い人はいるものですが、聖職であるべき(?)看護婦さんがそんなでは困りますね。
私は一首目が好きです。
定説 投稿者:noriさん 投稿日:2002/08/01(Thu) 10:00 No.1002
定説は夢には色の無きとふが吾しかと見しサルスベリの赤
深紅なる梅干ザルに並べられ陽射しは強く皺の増したり
Re: 定説 秀子 – 2002/08/02(Fri) 04:53 No.1004
どちらもジリジリと暑い真夏の光景、サルスベリの赤と梅干の赤が随分と対照的でインパクトがあります。
赤の色は歌に詠むと何かもの哀しいのは読む側の主観でしょうか。