2002年10月
『無題』 投稿者:博夫 2002/10/14
・退勤のクールダウンに歌を詠む今日を見据えるためで逃避ではない
・長いこと付き合ってるんだ長い目で見てやれ長所もあるぞ この俺
< mohyo >
日ごろの雑感ですが、心に秘めるファイトを継続させるスタミナが感じられる歌です。また職場に居れば多くの人が一度は感じることがある気持ちかもしれない。じょうじ ファイト アンド スタミナ !!
< noriさん >
一首目の「今日を見据えるためで」の字余りがnoriさんとしては気になるところであるが、上手い用語はなかろうか?
奥村先生でしたらどんなアドバイスが。。。
<奥村晃作>
noriさんに同感。一つの方法としては(下句の)語順を変える。
逃避ではない今日を見据えるために
とする。
『夜をおしみて』 投稿者:博夫 2002/10/13
・製氷ののちポケットに落ちてくる氷 突然その音ひびく
・阿耨多羅三藐三菩堤(あのくたらさんみゃくさんぼだい)/ぬばたまの/夜をおしみて 鳴く油蝉
<奥村晃作>
1首目
製氷の/のちポケットに/落ちてくる/氷 突然/その音ひびく
3句から 4句にかけての句またがり、そして4句の句割れが有効に働いている。
意味の上での読みを強くしたい作者の意思が一マス空けたと思う。
現在の言語状況からいけば句またがり、句割れのレトリックは必然である。
レトリックの働きのない句またがりは問題である。
2首目
阿耨多羅三藐三菩堤(あのくたらさんみゃくさんぼだい)が「ぬばたまの」を引き出し、「ぬばたまの」は枕詞として夜にかかる、以上は虚辞、つまり有心の序詞的な働きをしている。実部、つまり一首の主文は下の句「夜をおしみて 鳴く油蝉」である。技巧を駆使した佳作である。
『憩室』 投稿者:じょうじ 2002/10/12
・やになったよと愚痴聞き呉るる友の居てオフィス街の昼は秋天
・憩室とう響きよき名のもの腹に持てば急がず行くこととせむ
<奥村晃作>
1首目
「やになったよと」は、「やになったけど」の方が良い。
オフィス街 昼は秋天――音の響きが呼応しあって美しく、洒落ている。
2首目
響きよき名の/もの 腹に/持てば急がず/行くこととせむ
上は、短歌のフォルム(57577)に従った読み。
意味の切れ目で読むならば次のようになる
響きよき名のもの/ 腹に持てば/ 急がず行くこととせむ
どちらの読みも同時に成り立つ。句またがり・句割れのレトリックがよく効いている。(2句から3句にかけては句またがり、3句は句割れ。3句から4句に
『ゆっくりと秋』 投稿者:秀子 2002/10/10
・陽だまりに微かに揺るるホトトギス蕾解けてゆっくりと秋
・ほこほことまだ温かき栗ご飯笑顔を添えて友届けくる
< mohyo >
2首とも日本の秋ですね。
秋は初夏より体調が良くなる私です。死ぬ時には春桜の下でといったのは西行さんでしたかしら。
私は昔稲穂が揺れる景色を見ながら自分が死んでいく夢を見てそれ以来秋に死ぬと思っています。それが1首目の歌のような穏やかな日で『えっ!死ぬのってこんなんでいいの。』と思いながら目が覚めたのでした。
2首とも豊かな日常詠です。うらやましい豊かさを感じます。
<奥村晃作>
一首目の第四句は「ツボミホドケテ」と読む。
二首共によいと思います。
ちょっとお邪魔したついでに。
『初めて書き込みします』 投稿者:岩佐譲治 2002/10/08
初めて書き込みします。
やり方も、よくは判らないのですが・・・。
10月4日から、奥村晃作先生の銀座産経学園歌会に参加させていただくこととなりました。
・週末の夜の銀座を持ち帰りの仕事も抱えて歌会に急ぐ
・喰ひそびれし昼のコンビニ弁当もカバンにありて歌会初日
これから、よろしくお願いします。
< mohyo >
こんにちわ!こちらこそよろしくお願いいたします。
<奥村晃作>
企業にお勤めの方、今本当に忙しいのですね。
K氏も、Y氏も超多忙の様子です。
岩佐さん、焦らず、無理はなさらず、持続して下さい。
『柊二の歌集』 投稿者:mohyo 2002/10/06
・じっくりと読むべし柊二の歌集をと東大生の頃も今日も語れり
・感動をリズムに載せて詠み込めと落とし込めない私の中に
<奥村晃作>
1首目
4句の字余りは気になります。下の句は言葉を、 リズムを整えたい。
例えば→ じっくりと読むべし柊二の文庫歌集繰り返し読めと君は告げたり
2首目
下の句の意味がぼくにはわかりにくいです。
もう少し意味が分かるように表現を工夫して頂きたい。
mohyo
「 企業塾へ通っても成功例ばかり話されるから自分の中になかなか落とし込めないんです。背中を押してくれる一言がほしいんです。」という使い方をします。
(mohyoが) 推敲したうた
感動をリズムに載せて詠み込めと教室のたびに言う奥村晃作
『月に照らされて』 投稿者:麦生 2002/10/06
・盛り上がる大波とどまるかと見えて鯨の尾鰭ひるがえりたる
・人のなき縁側 月に照らされて三方のうえに盛られし団子
<奥村晃作>
1首目
2句の8音(4・4調)は全てダメというわけではない。この場合、おおなみとお音が主音をなしているから弾みすぎになってはいない。従って4.4の8音、1音の字余りは欠点(破調)になってはいない。可である。
2首目
作者の主観は述べられてないが、作者の感動が基にある描写の歌。
人のなき縁側 → 人けなき縁側の方が良い。
縁側 月に と一マス空けて、散文的読み(意味に従った読み)を強制している。
一方、短歌的詠み(5・7・5で区切る読み)も出来る。双方の読みが同時に成り立ち、句跨りがレトリックとして成功しているケースと言えよう。ポリフォニックな読みは、音楽性を高める。
2首とも、ものを見て手堅く描く、描写の歌・写生の歌である。
『さらせる顔』 投稿者:夏川 2002/10/06
・愛と慶なんの関連なけれども内に心をつつんでいたり
・たまたまを外にさらせる顔かたちわれの選びしものにはあらず
<奥村晃作>
1首目
「愛」も「慶」も文字の中に心の字が含まれています。従って 文字遊びの歌であるが、内容的にもこれらの文字(「愛」と「慶」)は心を含んで(包んで)おります。何の関連もないようでいて、この二つの文字には共通点が、関連があるわけです。軽いが、面白い歌。
2首目
外にさらせる → 突き放した言い方が良い。一首の内容には事実の、真実の強みがある。( お化粧で顔は作れるが、顔の「かたち」はかえられない)。
2首ともに良い作品である。