2号 2000/04/06

ふーしゃんの短歌ワールド

☆☆☆☆ 2号  2000年4月6日  by mohyo           ☆☆☆☆☆☆
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☆ われわれは作品によってみずからの生を証明したいと思う。 □ 宮 柊二 □  ☆
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☆☆☆☆★☆☆☆☆ ー次号は4月16日発行予定ー         ☆☆☆☆

◆ 結局人を救えるのは文学だと思う。……… 同僚 S・H 氏

ふーしゃん(母)は短歌結社『多摩』の北原白秋に師事。『コスモス短歌会』故 宮 柊二先生に師事現在にいたる。台北第一高女を経て台北師範卒。小学校教員を数年経験後,軍医であった父との結婚により退職。日本基督教団東京府中教会員。

◆ふーしゃんのうた -漁 舟(いさりぶね)-

たけかんばからまつ混じり濃淡になだるるところ信州の山
瀟洒なる平屋造りののびやかなり山中町役場サルビア燃えて
万葉の古き唐泊うらうらと湖の香のして漁舟並ぶ
逞しき農協のおっさん唐泊の万葉歌碑をぜひ見よという
吹き溜まる白き花びら手握るに湿りを帯びて弾力のある
火点して船を引き寄せ食糧と女奪えり松浦海賊
妹に恋ふ旅人の歌碑の読みにけりこの筑紫野に詩(うた)はただよふ
庭石の陰に咲きたる春蘭のうすき緑の花の優しさ

■ひゃらのうた ー男 親ー

マスクかけ咳するたびに魂が抜け出るような丑三つ時なり
蛍光燈八本ともるリビングに徹夜して読む『ゲッセネマの祈り』
大学の卒業式についてくる両親いとわぬ余裕の息子
魅力ある教授に出会わず卒業の息子をあわれむ男親なる
花粉症にめがねとマスクのわが後をはじらうように夫子が従きくる
皮膚炎で頭皮がおちる夫の肩雪のようなるを庭にはらい来
丁寧に夫の頭皮にくすりぬるストレスはその妻におよぶも
鶯が隣家の桃に来て鳴けり日照雨(そばえ)ふる日のこころが濡れる
半身は水に沈みて横たわる倒木死なず芽吹く三宝寺池に

●mohyoのエール

栄養失調だったひゃらが死なずにすんだのはその気のつよさだったと思う。
泣き出したらいつまでも泣き止まなかった。
沖縄返還の日ひゃらは琉装をしてテレビの中で踊っていた。

ひゃらはどんな事にも挑んでいくところがある。
人が泣き叫ぶところでも妹は祈りによって乗り越えてきた。

妹は流産を繰り返し子どもに恵まれなかった。私には3人の子があった。
『最近は子どものことを言わなくなった』と妹の連れ合いのことをぼそ
っといって妹は帰った。

私は妹の声がずーっと耳に残っていた。大文字焼きの夕ぐれ京都の病院
に妹ひゃらをたずねた。保育器の中に牛乳パックくらいの小さな甥がい
た。大文字焼きをみるからと病室の窓によりうれしさとちゃんと育たな
かったらひゃらが可哀相すぎるという思いで喉が締め付けられた。

ひゃらは「大丈夫。神様の声を聞いた。」という。私は訳もなく信じた。
「よく生まれてくれました。ありがとうね。」私は手のひらサイズの甥
に何度も声をかけた。

妹には短歌の素質があると心から思っている。