ふーしゃんの短歌ワールド
☆☆☆☆ 10号 2001年1月9日 by mohyo ☆☆☆☆☆☆
☆ ーーーーーーーーーーーー ☆
☆ われわれは作品によってみずからの生を証明したいと思う。□ 宮 柊二 □☆
☆ ☆
☆☆☆☆★☆☆☆☆ ー次号は1月下旬発行予定ー ☆☆☆☆
◆ 結局人を救えるのは文学だと思う。……… 同僚 S・H 氏
ふーしゃん(母)は短歌結社『多磨』の北原白秋に師事。『コスモス短歌会』故 宮 柊二先生に師事現在にいたる。台北第一高女を経て台北師範卒。小学校教員を数年経験後,軍医であった父との結婚により退職。日本基督教団東京府中教会員。
◆ふーしゃんのうた -赤ごま- (s.23年~33年)
赤ごまの思ふ存分乱れてゐるわが庭先に朝日差し初む
湧き清水に洗濯せむとバケツ下げ桐の落葉をふみつつ下(くだ)る
夫(つま)のいれし紅茶すすれば香りたちてこほろぎも終わりし深き秋かな
高利より低利に移し得し今日よいくばくの水羊羹を吾は買ひたり
金策の成りし今宵を子らを率て蛍狩ると分倍河原に出づ
恩赦にて今朝出でし人が酔うてゐる縞の包みをぶらさげながら
そっと来て草をむしりそっと帰りし当番兵に吾は負目持つ
戦艦大和の最期を見て黙黙と夜道を帰る映画と思へど
■ひゃらのうた ー炎の藻群よりー
切支丹でうすの魔法とけぬまま白秋生誕百七年目
旅にあう飛翔天女は桐の花その声涼し天界をゆく
天は地を憎まぬものを猛烈に怨嗟の雹が夏柑を打つ
予言書を片っぱしから読みちらす小桜色の少女あやうし
ジャケットをあな軽やかに脱ぐ少女母すてて地獄めぐり好めり
あんなふうに笑ってみよう首をあげひかりをぶるっとふるう水鳥
秋津辺の虹の公園だれもみな草刈る人ら腕まくりして
越天楽とつぜん鳴らし走り来る奇異に明るいあの宣伝カー
夏布団かかえとり込む陽に満ちて家族の絆ふくらむようで
思わざれば祖母ははや亡(な)し花デイゴ炎一色ずぶ濡れており
★ まつなおのうた-馬の瞳-
帰宅してスカーフを首に巻きしままハガキ1枚書き急ぐなり
雨あとの岸壁に立つ思いあり白鳩一羽胸に抱きしめ
なべて移ろふものの中にて不動なるものは何かと今日は思ひぬ
この一瞬この一瞬がすべてとぞ仕事に励む老人施設に
若さとはかくも良きかな青年は手を差し伸べて握手せしなり
芝居小屋に向かい歩めばなんとなく粋な女になりたるここち
客待ちの馬の瞳のおとなしく赤シャツの男煙草ふかせり
●mohyo
その少年は再テストを受けに来た。少し説明をして自習をしてから再テストに臨んだ。結果は無惨だった。文章も十分とは言えない。わたしは急遽口頭試問にしてやっと合格した。にこにこと笑顔が明るくわたしの心が和む少年だ。少年はこの辺では進学に力を入れている学校から転入してきたといった。それも進学クラ
スで無料で入学したんだそうだ。
「嘘だ」と思ったが担任に聞くといじめに遭っていわゆる「退行」現象を起こしたのではないかということであった。
やさしい少年が彼の側にいたが最近は離れてしまった。彼は子どものように付きまとったからではないだろうか。少年は「僕 避けられているのでしょうか。」と担任に質問したそうだ。
『アルジャーノンに花束を』という芝居を見た記憶があるがあの少年の最後は幸せの予測があったんですよね。