ふーしゃんの短歌ワールド
┏☆★☆━━━━━━━━━━━━31号 2003年4月26日 by もひょ ┓
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★☆★☆★ ふーしゃんの短歌ワールド ★☆★☆★
われわれは作品によってみずからの生を証明したいと思う。□ 宮 柊二 □
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次号は5月中旬予定
ふーしゃん(母)は短歌結社『多磨』の北原白秋に師事。『コスモス短歌会』 故 宮 柊二先生に師事現在にいたる。台北第一高女を経て台北師範卒。小学校教員を数年経験後,軍医であった父との結婚により退職。日本基督教団東京府中教会員。
老いてああああ 投稿者 ふーしゃん
・作歌をば忘れてゐたり八ケ月も老いてああああ病身のわれ
・思ひではむらさき色のかたくりを送りたまひき佐々木桂子さん
・夜の時間わからなくなり「夕食はとってゐない」と心で騒ぐ
研修会に参加して 投稿者 まつなお
・堂々と他人の家庭に入り行き内情を知るヘルパーの仕事
・「伝達」の意味と思ひしこの言葉「共有」と知るコミュニケーション
・その家庭の誰にも着かず中立の立場にたてと教へられたり
花の命 投稿者 mohyo
・今日からは昨日の続きではなくてタンポポの綿毛落ちるまで見つ
・枝・幹は確かなる明日持っていて今時満ちて桜花のみ散る
・爪切ってヤスリあてつつ昼間見し千鳥が淵の桜花思えり
ふーしゃん
2首目 桜花のみ散る → さくら花散る にします。
桜花のみとすると説明的になります。
さくらばなではなくさくら花にします。幹・枝・花をそろえます。
(奥村晃作先生のご指導によります。)
枝・幹は確かなる明日持っていて今 時満ちてさくら花散る
ウグイスの声 投稿者 秀子
・朝聞きしウグイスの声夕暮れの車の音に混じり聞こえ来
・空腹を満たす木の実のなかりしかウグイスの声終日聞こゆ
・転勤で帰り来る子の部屋に入り明るき声にて夫は語りぬ
noriさん
今年は浜松では鶯を聞きません。
息子さんの転勤で喜ばれる父親の姿が手に取る様に解ります。
「明るき声」が一層引き立てていると思います。
秀子
noriさん、ありがとうございます。
山を追われ、棲家も餌も乏しくなった鳥たち、今年のようにながくこんな喧騒の住宅地で鳴くことは初めてです。
浜松の鶯は今年は何処に行ったのでしょうね。
会話の少ない父子ですが、息子の帰省はやはり嬉しいようです。
三月の 投稿者 noriさん
・車椅子妻が押し呉れ径行けば桜散り初め共に仰ぎぬ
・散り初めし桜の花を惜しむよに車椅子止め妻と眺むる
・空気さえ桜の色に染まりそな春日の午後は霞たなびく
イラク 投稿者 山本凱子
・「母ならば 流れる涙 血潮たり 返せいのちを 返せ平和を」
・「愚かなるいくさ誰が為 人ならば 魂の声 叫びやまざる」
・「海青く大地みどりに恵まれし 地球殺して滅びまするか」
玉音 投稿者 誠吾
・玉音を聞く母の目に涙あり日々の苦労のむなしき果てに
史人
天子様を信じて疑わず「聖戦」という国家目標に邁進した毎日。
敗戦に茫然自失した半世紀前の自分たちの姿を思い起こせば「偉大なる将軍様」を口にする全体主義国家の国民をを笑えない気がします。
青葉 投稿者 勝
・人住まぬツンドラ越えて冬最中開戦近し国に迎へり
・開戦の間近き英国訪ね来て反戦唱ふる人に会ひけり
・イラクなる国の友達思ひゐて友の人柄その良き語る
遠き祖の跡 投稿者 澄子
・古(いにしえ)の祖の跡巡る旅に出づ 孫と二人の冬の島根路
・島根路の遠き祖尋ぬる冬の旅 絶やせぬ家系継ぐとふ孫と
・森深く苔むす社に人気なく孫と額づく島根「多鳩(たばと)神社」
吾告訴せり 投稿者 邦彦
・十余年救い求めし理事長に願ひ届かず 吾告訴せり
・師の遺作「常に波立つ」繰り返し読みて尋ぬるこれで良きかと
・穏やかに吾の怒りを聴きくるる師は波立ちし心を見せで
家のリフォーム 投稿者 藤枝
・想い出も捨つると定めてまとめたる有償無償の糧の多さよ
・ゆくりなく吾の苦渋も知りし部屋のいま崩されるる音におびゆる
・リフォームとふ負い目の前に黙したり 吾の手あかのつきし柱も
冬の日々 投稿者 洋三
・陽の恵み等しく受ける工夫して洗濯物を干す冬の朝
・氷点下になるとも知らずあたまから研ぎ汁かけてごめんねベコニア
・萎れたるベコニアの上ビニールを掛けやりながら妻われを責める
帰省した息子 投稿者 静江
・白菜と沢庵食べごろ待ち居れば帰省せし子はサクサクとはむ
・薄暗き電気取り替へ玄関のベルを直して子は帰り行き
・年賀状孫等と並ぶ雑種犬己れも当然兄弟の顔
noriさん
一首目は久々に帰省した息子さんを見る穏かな母親の顔が浮かびます。
ニ首目には息子さんの優しい気持が感じられ、共に良い歌ですね。
勾配の先 投稿者 實
・飼犬のおずおずとした習性が非日常の拒絶に至る
・雪が降る音を目で聞く 韻律が渇いた心の襞を潤おす
・勾配の先に奈落があることを確信しており徒労重ねる
英国の旅 ? 投稿者 史人
・アダム・スミスの家を訪ねて経済学学びし若き日を懐かしむ(エディンバラに
て)
・見あぐれば牧草地囲む石積みは延々として丘に起伏す
・囲込み(エンクロージュア)の意味確かめつ石塀の続く畑道今日も辿れり
障子貼り 投稿者 紀子
・障子紙を截りそろえゐる冬の午後 弱き日差しにせかされてをり
・しなやかにゆるくほぐれる巻紙の白きを截らむと息をつめをり
・糊をねり紙を截りゆき亡き祖父の指南の通りに障子 貼りゆく
金沢 投稿者 喜美子
・歳の瀬の近江町市場の活気には思わず笑顔で食指をのばす
・利家とまつのゆかり金沢で和太鼓の音とカウントダウン
・晴れ渡る金沢城址に木枯らしの吹きてさやけく空気澄みおり
寒稽古 投稿者 フサ江
・薙刀の寒稽古せし戦時下の学徒にありし遠き日おもふ
・「エイ ヤア」と裂帛(れっぱく)の声ひびかせて薙刀指導の若き女教師
・女教師の薙刀指導 掛声のすがすがしきよ今わが耳朶(じだ)に
桜 投稿者 露壜
お久しぶりです。
・更けゆけば紅の艶ます桜花君は何処の花を愛でるや
餅つき 投稿者 澄江
・嫁ぎ来て杵つき餅で三十余年今年の餅はスイッチでポン
・何十年杵音響いた餅つきに安堵と寂しさ入り交じりおり
・甥っ子が丸めて作る供え餅そっと直して我叱られたり
杳き歳晩 投稿者 昭江
・指(おゆび)折り正月を待つ幼日の夢はふくらみ蘇りくる
・大き臼を土間にしつらふ男衆の三本杵の餅搗くリズム
・「二た臼目はお供え餅よ」と母の声 明るき家ぬち杳く響けり
声持たぬもの 投稿者 百合子
・考へは幾変わりして果つるなく森より翳る山鳩の声
・声持たぬものの哀しさ水槽の数多の魚に凝視されたり
・いくばくの悔いを残して帰り来るうつしみの目にゆふづつ赤し
鴉 投稿者 玲子
・夕まぐれ鴉退治の有線が明日を報じゐるもの哀しくも
・心なしか鴉の鳴き声しめやかに途切れ途切れに森に消えたり
・朝明けはからすの声なく静かなり己がさだめをじっと待つがに
湯の里慕情 ? 投稿者 空っ風
・山峡(かひ)の八幡の杜(もり)は黄昏れて温泉(いでゆ)の町に春来るらし
・山峡の温泉を訪(と)ひし黄昏(おうこん)は八幡の杜に春来るらし
・千年の時空を超えて鎮座ます但馬七宮 八幡の社(やしろ)
あとがき
ひとつオトナになって
うまくいくこと、いかないこと
利き分け乗り越える力を掴み取れ
(ゆ)