30号 2003/03/22

ふーしゃんの短歌ワールド

┏☆★☆━━━━━━━━━━━━30号 2003年3月23日 by もひょ ┓
https://www.kokoronouta.net/
★☆★☆★ ふーしゃんの短歌ワールド ★☆★☆★
われわれは作品によってみずからの生を証明したいと思う。□ 宮 柊二 □
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次号は4月中旬予定

ふーしゃん(母)は短歌結社『多磨』の北原白秋に師事。『コスモス短歌会』 故 宮 柊二先生に師事現在にいたる。台北第一高女を経て台北師範卒。小学校教員を数年経験後,軍医であった父との結婚により退職。日本基督教団東京府中教会員。

男の意地           投稿者 ひゃら

・あす夫は定年退職リストラを拒みすわりし意地の椅子なり
・残っても辞めても地獄の〈ひと減らし〉不況のなかで誰も沈黙
・ぜったいに中途退職しない意地おとこの意地をはりとおしたり
・方言も芝居もほろぶ沖縄に沖縄男の意地なお頼む
・わがことば図星となりて傷つける男の意地はやっかいなもの

mohyo

お連れ合い様本当にご苦労様でした。またひゃらさんも大変でした
ね。悲しかったでしょうね。人生これからだよ。
これからはどんな仕事でも簡単に人と変われない働き(気ばたらきも含めて)方をするしかないですね。いつでも誰とでも変われるなら若い人の方が使いやすいし賃金も安い。
公務員でさえローンが組めない時代です。でもピンチはチャンスだ。
新しい風が吹いています。若い女性がすばらしい。

10年過ぎぬ          投稿者 mohyo

・よく晴れてガラス戸ゆらし吹く風にカーテン閉じて一日(ひとひ)こもらむ
・すきま風吹くときガラス戸きしませてこの家の生活(たつき)10年過ぎぬ

梅祭り            投稿者 秀子

・山あいの杉林の道燦燦と朝日の射すを車ひた行く
・見上げたる滝の流れに木洩れ日の幾筋となりけぶり立ち込む
・紅白の梅咲き乱る木の下に歌詠む人の集い和やか
・あるなしの風に散り初む白梅の花びら一つノートに落ちぬ
・過疎の村の梅祭り並びし屋台に白人交じりて烏賊を売りおり
・夕暮れて心急かるる車窓より灯りにおぼろの辛夷過ぎたり

母に逢ひたし          投稿者 邦彦

・寛・晶子連理の歌碑に妻と立ちシャッター依頼す平成の吾
・行商の亡母(はは)と重なるセコ蟹を買ひたり真実亡母に逢ひたし
・ただ一度新婚の妻に供したるセコ蟹食す 亡母を語らひ

冬の庭?            投稿者 史人

・冬庭に育ちゆくもの見付けたり若き松葉が日々伸びて行く
・目敏くも蹲踞(つくばい)の水替ふる見て小鳥飛び来て行水競ふ
・手水鉢に清水を盛れば野良猫がかをり嗅ぎ付け水舐めに寄る
・蝋梅が終はれば出番と沈丁花膨らむ蕾が咲く時を待つ

日本へ旅行           投稿者 渓水

・長旅の終り近くに富士を見る歓声上げつつ疲れも癒えて
・昔見た那智滝いづこと目に探す晴れし南紀上空飛びつつ
・冠雪し煙を噴ける桜島しばし車の窓から楽しみぬ
・そびえ立つ都庁のビルの隣にも貧しき人らのすみか並びぬ
・立ち並ぶビルの谷間の公園に家なき人は寝止まりしおり

シャガール           投稿者 房江

・悲しみのユダヤは遠し シャガールの窓に漂ふ人も薔薇(さうび)も
・かの国のおとぎ話か シャガールのロバも羊も空に漂ふ
・悲しみの結晶のごとく漂へるバラありシャガールの描く窓辺に
・幼な児の忘れし靴の玄関に 日に幾たびも吾を笑まする

寒き夕べ           投稿者 正子

・虚空より白さぎ一羽あらはれて寒き夕べの田にくだりたり
・鬱々と微熱のつづく幾日か立冬の空曇りて重し
・首筋のあつき気配に目覚めたり見えぬ幻ぬばたまの闇
・臙脂色の小菊を供花に手折る庭長く広がる隣家のかげり
・拭い切れぬガラスの曇りくれなゐの都もみじにわづか癒さる

風の日             投稿者 幸子

・高らかに「壁抜け男」のミュージカル熱演の声胸に染み入る
・ミュージカル心の憩ひ切なくも伝へる恋の幸福ありて
・人生は素敵と歌ふ物語 客も一緒に合唱の輪
・風の日の欅並木をさくさくと蹴散らしてゆく一つの悩み

てんとう虫          投稿者 寿子

・見慣れないてんとう虫がベランダに三日泊れり少し動いて
・遠路より我を見舞ひぬ子等夫婦持ち場持ち場のぬくもりを持ち
・一滴のしょう油を足して味しめる揺るる気持ちを鎮めるがごとく
・落ち込みて固まるばかりのわが頭溶かさう溶かさう「古時計」うたひて

信号は青           投稿者 道子

・信号を待ちている間の連帯となりて無縁の人ら群れなす
・待ちいたる人群れ微かに揺れ初むる兆しのありて信号は青
・ダンサーのごとく爪先ひるがえし赤信号を蹴る男あり
・過ぎたる日母に言われし言葉もて娘を諭しいる吾を侘びしむ

嵐山にて           投稿者 栄子

・うきふしや川のほとりの小督(こがう)塚塔はかしげて見るべきもなし
・大椋(くす)を目ざして尋ねし五輪塔扇子一本寂しが置かる
・悲しみの小督の局の五輪塔若き日の華やぎ夢のごとくに
・人の住むところ離れず近寄らぬ雀泡立つ様(さま)にはしゃげり
・鈴なりに小春をはしゃぐ雀群にガラス戸不意に開けてみるなり
・剪定の枝チョキチョキと切り刻む「たきび」の歌も今は幻

行方照らさず         投稿者 節子

・流水を空に描きし群れ鳥の離合集散飽かず眺むる
・天翔る行雲流水群れ鳥の去りたる後(のち)を占むる夕焼け
・朝な朝な畑に勤しむ老爺あり見ぬ日続きて畑荒れにけり
・駅の別れに手を振り交わし振り返り手を振り返す愛(めぐ)し幼子
・懐かしむ心にみすゞの詩集読む読みて哀しくその死を思ふ
・赤き点滅みせて闇ゆく飛行機の灯(あか)り悲しも行方照らさず
・車道をはさみ吾が名呼びつつ自転車の友が笑顔で手を振り過ぎる

地球の一点          投稿者 一江

・青空に雪の衣の裳裾ひき気高き富士の峯(ね)地球の一点
・箱根路を目指すマラソン選手等の吐く息白く襷を繋ぐ
・初春に天下の険の箱根山炎えるマラソン降る雪解かす
・憧れの薄紅色のシクラメンもう似合わない色褪せし吾
・「恋人よそばにいてよ」は去る言葉夫婦(めおと)とは何互いの介護
・頑なに固き蕾の白梅は東風になぞられ春に目覚めん
・東風吹きてみ寺の境内(その)の蝋梅は香りただよい春に誘(いざな)う

プチ家出            投稿者 直子

・強がりのプイと飛び出すプチ家出はとバス終着東京暮れゆく

邦彦

こんなはとバスの利用方法もあったのかと、思わず微笑みが浮かぶ。最近十代の女性の間で流行っていると言うプチ家出、実にうまく一首の中に生かした。プチ家出の「プチ」は「小さい」「かわいい」の意。だからこそ終着駅は家に帰る始発駅。東京で拾った小さな夢がそこにあった。

mohyo

おばさんのプチ家出 これは健康ランドです。深夜料金を払えば泊まれるしお湯は温いし息子もにも夫にも舅にも疲れたおばさんがそこにかかる芝居の役者の追っかけをしていたのでした。

俳句で御免2002-3      投稿者 JUN

・卒業や若き背中に負ひしもの
・海越えて汝(なれ)は来にけり花いちご
・梅の香や蕾と言へど揺るぎなし
・三月の名刺や残部気にしつつ
・春山河ギイと季節の移りけり

あとがき

我が家のピカピカの1年生
親子で新しい生活に向かって思いをはせる毎日
楽しいことも、辛いことも4月でリセット。
(ゆ)