25号 2002/10/30

ふーしゃんの短歌ワールド

┏☆★☆━━━━━━━━━━━━25号 2002年10月30日 by もひょ ┓
https://www.kokoronouta.net/
★☆★☆★ ふーしゃんの短歌ワールド ★☆★☆★
われわれは作品によってみずからの生を証明したいと思う。□ 宮 柊二 □
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次号は11月上旬予定

ふーしゃん(母)は短歌結社『多磨』の北原白秋に師事。『コスモス短歌会』 故 宮 柊二先生に師事現在にいたる。台北第一高女を経て台北師範卒。小学校教員を数年経験後,軍医であった父との結婚により退職。日本基督教団東京府中教会員。

弥陀のくびれ         投稿者 ひゃら

・新宿にジャワの舞を見ていたり弥陀のくびれの太きや細き
・ジャワの舞一曲おわりいっせいに友らはまねてくねらせり 指
・注文の料理はそろい食べつくす気持ちいいほど舌もえる辛さ
・青い月ジャワ料理店のかたすみを陣取れどわれらにくるも晩年
・心地よく眠りなさいとしずかにて青三日月は新宿の空

右に避けつつ         投稿者 mohyo

・小雨ふる螺旋階段のぼりゆく降りてくる人右に避けつつ
・拉致されて北朝鮮に馴染まされ今は子に明かす我ら日本人と

美容院            投稿者 まつなお

・美容院に待つ間を読みぬ芸能界の様々な出来事華やかにして
・もっと明るき茶髪にせよと美容師は笑顔に言へど断はるわれは

mohyo

まつなおさんの歌にはよく”に”が使われますが”に”がとても気になる時とそうでない時があるのですがなぜでしょうか。

ひゃら

に の使い方?むつかしい。広辞苑にどっさりかいてあるからご覧あれ。

キム・へギョンちゃん     投稿者 秀子

・いたいけなキム・へギョンちゃんの会見を黙して見入る吾は娘と
・大粒の涙を流すへギョンちゃんに追い討ち掛けて会見続く

noriさん

この時期に何故?報道の自由の有る日本ですが、疑問を感じます。
拉致被害者を追っかけて一部始終を報道するマスコミに怒りを覚えます。

mohyo

同じく蓮池さん宅に嫌がらせの手紙や無言電話も許せないですね。

久々に...         投稿者 noriさん

・日に光る水面に魚のよく跳ねて波紋を見つゝ飽かぬひと時
・働きもせで日を過ごす吾が身にも一週間は早も過ぎたり

mohyo

1首目光の中に魚も水も輝き波紋はそのあと消える。その静かな時間の流れが伝わってきます。パソコンを開けてホッとして何度も読み返しました。

夜をおしみて          投稿者 博夫

・製氷ののちポケットに落ちてくる氷 突然その音ひびく
・阿耨多羅三藐三菩堤(あのくたらさんみゃくさんぼだい)/ぬばたまの/夜をおしみて 鳴く油蝉

奥村晃作

1首目
製氷の/のちポケットに/落ちてくる/氷 突然/その音ひびく
3句から 4句にかけての句またがり、そして4句の句割れが有効に働いている。意味の上での読みを強くしたい作者の意思が一マス空けたと思う。
現在の言語状況からいけば句またがり、句割れのレトリックは必然である。
レトリックの働きのない句またがりは問題である。

2首目
阿耨多羅三藐三菩堤(あのくたらさんみゃくさんぼだい)が「ぬばたまの」を引き出し、「ぬばたまの」は枕詞として夜にかかる、以上は虚辞、つまり有心の序詞的な働きをしている。実部、つまり一首の主文は下の句「夜をおしみて 鳴く油蝉」である。技巧を駆使した佳作である。

無題              投稿者 露壜

・空蝉の枯れるを待たぬ紅葉かな雁の便りを聞きながら
・三日月にセイタカアワダチ姿あり荒れ地を埋める蕎麦ほの白く

mohyo

こんばんわ!おはようかな?
上の句と下の句ともにムードは分かるような気がするのですが読み込むと意味が分からなくなります。
出来ましたら解説お願いします。

露壜

空蝉の枯れるを待たぬ紅葉かな雁の便りを聞きながら前回の歌にも通じますが、自分自身の人間としての成長の無さを歌っているつもりです。四季がめぐり歳月を重ね、木々や鳥たちは成長しているのにと、また、そんな心のうちに自然からの声が聞こえるような気がしました。
ぐずぐすするなよと。

三日月にセイタカアワダチ姿あり荒れ地を埋める蕎麦ほの白くセイタカアワダチ草は野にすっくりと伸びて、私は好きな草ですが、一般には嫌われる雑草です。その黄色の花が、三日月の光の中に浮かび上がるように見えました。まただれが播いたのか、土手の一角に蕎麦が白い花を咲かせていました。昼間はほとんど、顧みられない花が月夜に生き生きとして、綺麗だよと声をかけたくなるように見えた、浮世にも通じる光景でした。

憩室              投稿者 じょうじ

・やになったよと愚痴聞き呉るる友の居てオフィス街の昼は秋天
・憩室とう響きよき名のもの腹に持てば急がず行くこととせむ

奥村晃作

1首目
「やになったよと」は、「やになったけど」の方が良い。
オフィス街 昼は秋天――音の響きが呼応しあって美しく、洒落ている。

2首目
響きよき名の/もの 腹に/持てば急がず/行くこととせむ
上は、短歌のフォルム(57577)に従った読み。
意味の切れ目で読むならば次のようになる
響きよき名のもの/ 腹に持てば/ 急がず行くこととせむ
どちらの読みも同時に成り立つ。句またがり・句割れのレトリックがよく効いている。(2句から3句にかけては句またがり、3句は句割れ。3句から4句にかけて句またがり、さらに4から5にかけて句またがり―そのような構造となっている)

俳句で御免2002-10      投稿者 JUN

・稲刈られ夕陽へ至る大地かな
・佇めば吾に寄り添ふ葛の花
・壁打ちのテニスの音や秋の暮
・渡り鳥露地売り野菜輝けリ
・挿し木より我家に生ふる松手入
・下駄買うて伊香保石段街の月

あとがき

秋の夜長、夫と二人、子どもたちの将来を話し合う。
希望と期待はそれぞれ違うが、結論はいつも同じ。
「彼らが楽しければ、幸せならばそれでいい。」
(ゆ)