ふーしゃんの短歌ワールド
┏☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 15号 2001年9月20日 by もひょ ┓
★☆★☆★ ふーしゃんの短歌ワールド ★☆★☆★
われわれは作品によってみずからの生を証明したいと思う。 □ 宮 柊二 □
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次号は9月下旬予定
>>結局人を救えるのは創作活動だと思う。……… もひょ<<
ふーしゃん(母)は短歌結社『多磨』の北原白秋に師事。『コスモス短歌会』 故 宮 柊二先生に師事現在にいたる。台北第一高女を経て台北師範卒。小学校教員を数年経験後,軍医であった父との結婚により退職。日本基督教団東京府中教会員。
・ ふーしゃんのうた -八月十五日 -
飛ばされし吾娘(あこ)の襁褓(むつき)のくらぐらと海へ落ち行く引き揚げ船
mohyo
台湾からの引き揚げ船で覚えていること。
乗りかえるための小船は当時3歳の私が見てもそれほど大きくなかった。
その船に乗る時妹は負ぶわれていた。大人たちは両手に荷物を持っていて次々に乗っていった。ゆらゆらする階段は、私には間があいていて、踏み外せば海に落ちるような階段の橋であった。置いていかれたら困るし、足を出せないでいる恐怖の私の前に軍服の兵隊さんがしゃがんで負ぶってくれるという背中が見えた。
この背中の広さや軍服の汚れ加減を時々思い出す。
食事は並んでお鍋にもらってきた。薄暗い船室とあの食事の臭いは泣きたくなるのをじっと堪えた臭いだ。
赤ちゃんが亡くなって海に沈める行事もあった。私はあの時の恐怖を忘れることが出来ない。死んだらこんな海に捨てられるのだ!
私は台に上がって海を見た。
海を渡ってイエスさまが助けに来て下さると強く思って海を見た。
遅いので泣いた。
気がつけば皆立って泣いていた。祖母は声を上げて泣いていた。
船こぞりて泣きぬという古文にふれて全くこの時を表現し得ていると妙に感動した。
私はイエス様がいらしたと感じた。そして大きく息をした。
あんなにイエス様を感じたことがある私がどうしていまだに受洗できない
のか不思議である。
JUN
この歌の文学的評価の程はわかりませんが、歴史的重みという点から言って、作者の代表作ではないかと思います。
特に「くらぐら」の表現は、単に薄暗い様を意味する「暗暗」だけではなく襁褓が、まさに揺れながら海面に落下していくさまを表現した擬態語として使われ、効果を上げています。
擬態語は安易に使うと陳腐なものになり勝ちですが、この「くらぐら」は揺れ落ちる襁褓の白さや、落ち行く先の海の暗さを連想させ、更には作者の疲れきった心理やこの母子の前途までをも暗示するすぐれた表現になっていると思います。
ひゃら
JUNさんの歌評凄いね。俳句も良くなって来ている。
★ まつなおのうた -様々な事情その思ひ -
職員の様々な事情その思ひ頭に浮かびシフト作れり
台風の情報流す情報の声途切れつつ銚子港映る
台風のシーズン来れば天気予報まずは聞きつつ日々を過ごせり
デイ・サービスの納涼祭にとヨーヨーを膨らませつつ準備に忙し
一日は二十四時間励まされ叱られつつも仕事を続ける
よしこ
介護の仕事は台風も地震も関係なく続きますものね。
11号台風で命を落とされた方々のご冥福を祈ります。
私も介護の仕事をしています。職場の様子が目に浮かびます。
お互いに頑張りましょう。
mohyo
一首目のその思ひ頭に浮かび・・・・
その思ひ心に浮かべてシフト作りぬではどうだろうか。
四首目 ヨーヨー膨らませつつ準備に忙し・・・・
ヨーヨー膨らませたりツルを折ったりの方が忙しい感じが出るような。
◎JUNの作品 =俳句でごめん=
大波に潮浴む子等の砦落つ
咲き満ちて百合支えるや百合の茎
旅せんと生まれし汝れや夏帽子
神田川木枠の窓の釣忍
むじな
咲き満ちて百合支えるや百合の茎
が気に入りました。花を見ている歌はあります。
しかしその茎まではあたりまえすぎてつい見逃しがちです。
mohyo
夏帽子は、奥さんの病状を思いやりながらも元気に旅立つ奥さんを思っています。
☆ひゃらのうた -さっぱりさらりー
新宿の三角ビルの一地点わが肉体は柔らかく立つ
平安あれ(シャローム)と印刷のある便箋の数枚残しわが夏もゆく
黄の花の吐息のような朝は来てさっぱりさらり旅に行こうか
やわらき雲流れゆく春の窓君とみがきし愛めぐり来よ
むじな
4首とも自然でいて個性が出ている・・・・うまい!
● 応募館の作品より mohyo
1.丸山清美さんのうた -就職試験?ー
速さだけ競う試験が続けられ清美という名の出番がこない
一秒を競って解いた数学の記憶戻らぬ就職試験
作文の試験に臨む部屋の隅さっきの試験のマルつけの音
一問の答えに未来が左右され除(の)けられまいと就職試験
塗りつぶしたマークシートの黒まるの数は増えてももらえぬ内定
2.オリーブさんのうた -財布の中の百円札ー
亡き母の財布の中の百円札 貧しき暮しの若き日そこに
まちこ
百円札って懐かしいです。
お財布の中に取あえず百円があると安心でした。
3.ユキオさんのうた -変わりない夜の新宿ー
変わりない夜の新宿歌舞伎町三十余年でわれは変わりぬ月光仮面
歌舞伎町はだいぶ変わりましたよ。夜の賑わいを味わうあなた自身の気分は昔のままなのではありませんか。しかし体力・気力の変化を感じているあなたでもある。
味わい深いものがあります。
4.マサゴロウさんのうた -日記書く文字ー
診察を終えて帰りしベッドにて日記書く文字みだれてふえぬ
もとこ
病院の夜って長いんですよね。私はテレビを見ることくらいですがマサゴロウさんは凄いですね。日記もいいかな。
5.みよこさんのうた -風さわやかに草ゆらぐー
霧が峰風さわやかに草ゆらぐニッコウキスゲもきそい咲く宇宙
昨年、私も霧が峰のニッコウキスゲを見ました。
高原の花は爽やかです。
夏の太陽に照らされて咲く花の色ってハッキリしていてきりっと咲いているんですね。沖縄に行ってそう思いました。
6.まちこさんのうた -一人目さめてー
我ひとり目さめて友に声かけず手足を伸ばす喜連川の湯
おむすび
私も同じ事をしていました。私は17歳です。
7.いちゑさんのうた -足載せ長枕ー
両端に長き房つけむくみたる夫の足せむ長枕縫うピッピー
私なら布団を折りたたんで終わりだけれど長枕を作るそれも
両端に長い房をつけて・・・・なんかいいね。