ふーしゃんの短歌ワールド
┏☆★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 13号 2001年4月4日 by mohyo ┓
★☆★☆★ ふーしゃんの短歌ワールド ★☆★☆★
われわれは作品によってみずからの生を証明したいと思う。 □ 宮 柊二 □
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次号は4月中旬予定
>>結局人を救えるのは創作活動だと思う。……… mohyo<<
ふーしゃん(母)は短歌結社『多磨』の北原白秋に師事。『コスモス短歌会』 故 宮 柊二先生に師事現在にいたる。台北第一高女を経て台北師範卒。小学校教員を数年経験後,軍医であった父との結婚により退職。日本基督教団東京府中教会員。
・ ふーしゃんのうた -十二み弟子 -
夫の背をながす時に思ひ出づフェルナン・レジェの「男の背」
祈らざる前(さき)にわが願ひ知り給ふ神といふああすばらしいかな
火の柱雲の柱をめざしつつモーゼは民族(たみ)を率ゐて行きぬ
野茨の中に落ちたる種われは伸びざりしかな伸びねばならぬ
わが心(うち)に芽生えし迷ひ一つあり高安寺に来れば梅の花ざかり
わが胸に頭突っ込み眠る児よ母を離るる日の未だ遠く
キリストの十二み弟子みな男なれば今夜つくづく不思議と思ふ
四肢のばし横着にねむる犬の傍(そひ)ひひらぎなんてん粉ふく実を持つ
(愛犬チェリー)
わが肩を打つ幼な手(おさなで)の感触よいかなる未来母子を待たん
■ ひゃらのうた -滅亡(ほろ)びしかなた -
山の月荒涼として寒いとぞ母の心に咲く破れ傘
縮まりて老いゆく母よ武蔵野のむらさきの野に歌詠みて死ね
姫リンゴただあかあかと実を垂れたり燃えつつ渇く我は見にゆく
冬陽さす忍川橋(おしかわばし)に尾長鳴きわれはちいさき影さえ怯ゆ
首里の血をほこるほかなき一兵士父の昭和は菊に埋れよ
枯れ野きて一月の風吹きもどる父の一生(ひとよ)も平凡ならず
ふりむけば滅亡(ほろ)びしかなた琉球のむねんは濃ゆき首里の血を持つ
★ まつなおのうた -共に眺めし -
円覚寺に修業中なる僧たちの姿見るなり友と尋ねて
新婚の頃かと思ふ夫と来てこの円覚寺を共に眺めし
来客を案内するとて家族揃ひ歩みし寺も円覚寺なり
枝垂れ梅華やかに咲く梅園を友と歩めり夕風の中を
梅干しの出来る工程廻り見て試食コーナーに友と憩へり
● 応募館の作品より
ユキオのうた
居酒屋で妻ある男を恋うるひと酔いてかたりぬ 私はピエロ
背をかがむうしろ姿の声までも母に似てきし三十路になりて
マサゴロウのうた
指折りて字あまり字たらず詠いつつ銭湯帰りの坂のぼりゆく
飲み干したコップの底の水の輪が冷たくひかる夜の卓袱台
オリーブのうた
やわらかな日差しの中のミニ内裏猫と我とで仲良く眺め
亡き君がゆりが好きだと告げし顔二十三年すぎてもかわらず
カズコのうた
好天のチャグチャグ馬っ子行進に化粧したまま寝入る幼子
縁側に家族寄りゐていも食べし日だまりだけは今もぬくけき